就活準備を進める上で、避けて通れないのが筆記試験対策ですよね。
ただ、具体的にどんな対策を取ればいいのか、企業は筆記試験でどんな能力を測ろうとしているのか。
わからないことだらけではないでしょうか。
今回は、長年企業で新卒の採用を担当していた筆者が、採用担当者から見た筆記試験対策について解説していきます。
筆記試験は何のために行われるのか
まず、企業が行う筆記試験には、大きく分けて以下の五つがあります。
学力試験 (学力を問うもの) |
募集職種にふさわしい学力があるかを判断するために行われます。 |
一般常識試験 (一般常識を問うもの) |
時事問題など、大学生なら知っていて当然というレベルの基礎的な能力を判断します。 |
性格検査 (性格を測るもの) |
学生の持つ本質的な特性を判断します。 |
適性検査 (適性を測るもの) |
募集する職種を行うのにふさわしい適性の持ち主か判断します。 |
小論文 | 論理的思考力を判断します。 |
どの試験を実施するかは企業によって様々です。
上記の五つ全ての試験を行う企業もあれば、どれか一つしか行わない企業もあります。
また、性格検査や適性検査は市販のテストを利用することが多いですが、学力試験や一般常識試験は、企業がオリジナルで作成した問題を使用することもあります。
採用試験で筆記試験を行う理由
そもそもなぜ、企業は筆記試験を行うのでしょうか。これも企業によって幾つか理由はありますが、大まかには次のような理由が挙げられます。
足切り
「面接に進める学生を選考するため」
学力であれば、いわゆる足きりというやつです。
学生が殺到する大企業や有名企業ほど、これを理由に筆記試験を課すことが多いようです。
まさか応募者全員を面接するわけにもいきませんよね。
学力に比例して人材の質も変化するというデータもあるくらいです。自社にふさわしい学力を持っている人を絞り込むために活用します。
客観性の確保のため
面接だけでは主観的になりやすいので、数値による客観的要素を選考に加えるために活用します。
選考において面接に比重を置く企業も多いですが、そうなると要領のいい学生、元々人前で話すのが苦にならない学生などが高い評価を得てしまいます。
バランスのいい人材を採用するために、筆記試験の結果も加味して総合的に判断します。
企業が求める能力を持った学生か判断する
社風や職種によって求められる能力は違ってきます。
例えば営業であればコミュニケーション能力の高さや、好奇心旺盛なタイプが求められ、事務職なら几帳面さや集中力の高さなどが求められます。
適性がない職種についてしまうと、後々ミスマッチなどが起こって、入ってから苦労することにもなりかねません。
最終選考時に筆記試験の成績順に合否を決めるため
例えば10名採用する予定で、最終面接まで残った学生が11名いたとします。
9名まではすんなり決まりましたが、最後の一人をどちらにするか決めかねた時、筆記試験の成績が高い方に内定を出す、などの使い方をします。
学歴フィルターの代わりに使う
足きりに似ていますが、試験の前に学歴で落とすことがあります。
いわゆる学歴フィルターなのですが、「学歴で落とします」と公表すると反感を持たれてしまいます。
なので、筆記試験で落としたことにします。いわゆる企業側のアリバイ作りのために行うものです。
最後の学歴フィルターの代わりに使う企業の場合、どんな対策を立てても、三流大学の学生は内定をもらうことができません。
学歴フィルターや、適性がないことで落とされた場合は諦めるしかありませんが、基本的に筆記試験は、合否を決める重要な試験となるので、しっかり対策を立てるようにしましょう。
企業が見る選考ポイントは?
それでは筆記試験別に、企業が見ているポイントと具体的な対策について説明します。
学力試験
学力試験については、企業がオリジナルで問題を用意することもありますが、ほとんどの企業で採用しているのが、SPIです。
SPIには主に日本語能力を見る「言語」と、数学の能力を見る「非言語」とがあります。問題のレベルはどちらも中学生レベルがほとんどですが、大学生になると中学生の頃に習ったことを忘れてしまっていることも多く、思いのほか苦戦するようです。
また、SPI独特の問題も出題されますので、出題のパターンを知り、忘れていた公式を復習しておくことは大切です。
SPIはメジャーな試験なので、数多くの対策本が出版されています。解説も優しいものが多いので一冊は購入して、本番までに何度かやりこんでおくことをお勧めします。
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またweb上で模擬試験を受けられるサイトもありますので活用してください。
有名どころではマイナビが実施しています。
参考マイナビの適性検査対策WEBテスト
さらにSPIには、その実施方法が三種類あります。
実施方法によって出題範囲が異なるのもSPIの特徴です。どの実施方法で行われるかを決めるのは企業側で、学生に選択権はありません。従って、三つの実施方法全てに対応できるようにしておく必要があります。
また、SPIは点数として結果が明確に現れるので、企業にとっては足きりに使いやすい試験です。対策には時間をかけて、慣れておくようにしてください。
一般常識試験
問題は最近話題となったニュースから出題される時事問題や、国語、数学、英語、理科、社会と広範な科目から万遍なく出題されることが多いです。
企業にとっては、これから社会人になるにあたって、最低でもこれくらいは知っておいて欲しい、という知識を問う問題が多いのが特徴です。
足きりに使いやすいのはSPIと同様ですが、総合点で判断するだけでなく、希望している職種が理系寄りか、文系寄りかによっても変わってきます。
例えば理系大学生で、エンジニア職に応募してきた学生がいるとします。
100点満点の一般常識試験で70点の成績を残し、総合点では一番だったとしても、得点の内訳が『文系>理系』なら、この学生よりも総合点は低いが、内訳は『理系>文系』の学生の方が、評価が高くなることもあります。
少なくとも自分が志望する職種に関係する分野で、得点を稼げるような勉強の仕方をしてください。
また、時事問題については、日頃からの努力がものを言うので、今日からでも新聞を読んだり、ニュースを見たりしておくことが大切です。
他の成績が良くても、時事問題の点数が低いと、この学生は常識がない、と採用担当者の心証が悪くなることがあります。
性格検査
性格検査については、対策しても意味がありませんので、ありのまま回答するようにしてください。
というのも、性格検査には学生がうそをついていないか、本気で答えているか、を見抜く対策が施されているので、小手先のテクニックは意味がありません。
でも、企業にとって望ましくない性格だと判定されたらどうしよう、と心配される方もいるかもしれませんが、企業側が性格検査だけで、学生の人となりを決めてしまうことはほとんどありません。
性格検査の結果が重要視されるのは、面接の時です。性格検査の結果と、面接での印象。この二つを総合して判断します。
適性検査
学力試験のところで紹介したSPIも、適性検査の一種として扱われることがあります。しかし企業によっては、SPIとは別に、適性検査を行うところもあります。
SPI以外の適性検査として有名なのは、SEやプログラマの適性を見るCAB(キャブ)、商社や証券会社で採用されることが多いGAB(ギャブ)、学生の知性と性格を総合的に判断する玉手箱などがあります。
いずれの適性検査にしても、企業が求める適性を有した学生であるかどうかです。企業が求める適性は、その企業の社風や職種によって違います。
ちなみに筆者が採用担当だった時は、以下のような能力に注目していました。
- 募集職種に対する適性があるか
- チームワークを重視するタイプか
- リーダーシップを取るタイプか
- 好奇心旺盛なタイプか
- コミュニケーション能力は高いか
また、適性検査は他の筆記試験などの結果と合わせて見られることが多いです。
例えば適性検査の結果は企業が期待したものではなかったとしても、学力試験や一般常識試験の結果がずば抜けている、エントリーシートが優れている、大学の成績がいい、などの場合は、とりあえず面接まで進めて様子を見ることもあります。
小論文
筆記試験に小論文を課す企業も少なくありません。小論文がしっかりかける学生は、論理的思考力が高いと見なされます。
しかしこの小論文が苦手な学生も多いのではないでしょうか。
実際、筆者が採用を担当していた時も、400字詰め原稿用紙で2枚程度の分量にもかかわらず、まともに小論文を書けていた学生はほとんどいませんでした。
逆を言えば、まともに書ける学生が少ない分、ライバルたちと差別化できるチャンスでもあります。
採用担当者は一度にたくさんの小論文を読みますので、最初の数行を読んで小論文の体裁をなしていないものは、最後まで目を通されない可能性もあります。
対策本を読むだけではなく、例題に沿って実際に作成してみるのも良いです。
大切なのは文章のうまい下手よりも、序論、本論、結論がしっかりしていて、自分のものの見方や考え方が反映されていることです。
まとめ
筆記試験対策については、意外とやることが多くて驚かれたのではないでしょうか。自己分析や企業研究、エントリーシートなどせっかく頑張ったのに、筆記試験で落ちてしまうのは勿体ないですよね。
性格や適性については、個人の能力でどうにもできない部分もありますが、学力や一般常識を問われる問題や、小論文は今から対策を始めれば十分間に合います。
少なくとも足きりにだけは合わないよう、しっかりと対策してください。