就活コラム

就活の強い味方!IR情報を読みこなそう!

2021年9月10日

「元人事担当者が教える企業研究の目的と正しいやり方」という記事の中でも紹介しましたが、就活に必須の企業研究にはIR情報が便利です。
そこで今回は企業研究に使えるIR情報の読み方を解説します。

参考元人事担当者が教える企業研究の目的と正しいやり方

IR資料とは?

株式会社の持ち主はだれかわかりますか?

  • 社長?
  • 会長?
  • 創業者?

正解は株主です。株式を持っていなければ社長でも、会社経営に及ぼす影響力は小さいものとなってしまいます。

そのため株式会社は、決算が終わったらその年度の決算内容や、業務内容を株主に説明しなければなりません。これは会社法という法律でも決められています。

このように企業が株主などの投資家に向けて行う活動をIRと呼ぶのです。つまりIR情報を読めば、企業がその年、どんな活動を行い、どのくらいの収益を上げたかはもちろん、何を目標にして会社経営を行っているかなど、必要な情報を把握することができます。

企業の全体像を知るならファクトブック

ファクトブックとは企業がPR用に作製した広報資料のことで、事業内容はもちろん、企業理念や経営状況まで文字通り事実が一つにまとめられていています。

これを読めば企業の全てがわかると言っても過言ではありません。

それでは早速、具体例を見ながら、ファクトブックの読み方を解説していきます。

例に取るのは「アサヒスーパードライ」などでおなじみのアサヒビール株式会社のファクトブックです。

参考アサヒビール株式会社

企業情報からIR・投資家情報と進み、IRライブラリーのファクトブックを選択します。2017年第2四半期のFACTBOOK2017を開いてください。

2ページ目に企業理念、コーポレートブランドステイトメント、長期ビジョンなどが書かれていて、アサヒグループがどういう信念を持って事業を行っているかがわかります。

3ページ目には中期経営方針が示されています。ここでは2016年から3年の間に、事業をどういう方向に進化させたいか、どんな事業に力を注いでいくか、などが書かれています。

4ページ目にはセグメント別、つまり事業種類別の売り上げグラフが載っています。このグラフにより、アサヒグループの主軸事業が酒類事業であることがわかります。

ここでセグメント別の売上を確認したのち、もう一度中期目標に戻ってみるとアサヒグループの戦略が見えてきます。

酒類事業:そのまま成長させる

飲料事業:差別化したポジションを狙う(個性的・健康志向、新価格=値上げ?)。収益の拡大(SKU削減・販売チャンネル・容器改善)

…(頭を使って考えてください!)

※SKU=Stock Keeping Unit:在庫管理のアイテム数のことを言います。

服ならS、M、Lで3SKU。S、M、L、XLなら4SKU。Sサイズでも赤、青、黄色なら3SKU。

SKU削減とは、売上の悪いアイテムを分析して減らすことです。

6ページの主要関係会社一覧も見逃せません。NHKの朝ドラ「マッサン」で有名になったニッカウィスキーや、老舗日本料理店のなだ万などが、グループ会社に名を連ねているのがわかりますね。

このようにファクトブックは、企業研究にはとても役に立つ情報が満載の資料です。おまけに画像や図表がふんだんに使われていて、非常に見やすい資料となっているので、気になる企業があったら、まずはファクトブックだけでも読んでおきましょう。

企業の経営状況を把握するなら決算短信

ファクトブックにも売り上げや営業利益などはまとめられていますが、より詳しく企業の経営状況を把握するには、決算短信を読む必要があります。

決算短信というのは、上場企業の決算情報がまとめられた報告書のことです。

決算情報と言われても、数字ばかりが並んでいてなんだか難しそう、と敬遠しそうになる学生も多いのではないでしょうか。

しかしせっかく関心を持った企業が、実は経営不振に陥っていて、入ったらすぐに倒産してしまった、なんてことがあっては大変です。

決算短信を読めば企業の業績が一目でわかるので、是非とも読めるようになっておきたいものです。

とは言え、いきなり専門用語がずらっと並んだ決算書を読め、となるとハードルも高いので、ここでは最低限押さえておきたいポイントだけ解説します。

それでは、『シン・ゴジラ』『君の名は。』が大ヒットしたことでおなじみの、東宝株式会社の決算短信を例にしてみましょう。

参考東宝株式会社

まずサイトトップから会社情報をクリックしてください。するとIR情報という項目が出てきます。カーソルを合わせて、プルダウンメニューから決算短信を選びます。

決算短信のページには、上から、平成30年2月期第1四半期決算短信、平成29年2月期決算短信という具合にたくさんの決算短信が並んでいます。

今回は平成29年2月期決算短信から見てみましょう。

上場企業の決算は四半期、つまり3ヶ月毎に行うことが義務づけられています。

3月決算の企業なら

  • 4月から6月を第1四半期
  • 4月から9月を第2四半期
  • 4月から12月を第3四半期
  • 4月から3月を第4四半期(本決算)

と呼びます。

東宝は2月決算の企業なので、平成29年2月期決算短信を読めば、平成28年1月から平成29年2月までの一年間の業績を知ることができるのです。

それでは平成29年2月期決算短信を開いてください。

まずは営業収入を見てみましょう。平成29年2月期の営業収入は233,548百万円。その横に1.8%と書いてあるのは、前年の平成28年2月期と比較して、1.8%営業収入がアップしたことを示しています。

同様に営業利益、経常利益を見てみると、いずれも23.4%、21.4%と業績を伸ばしていることがわかります。

前年同時期も全てプラスなので好調なのがわかりますね。

それではどうして東宝は、こんなに業績を伸ばすことができたのでしょうか。その答えも決算短信にちゃんと書いてあります。

業績が伸びた理由

資料2ページ目の、【(1)経営成績に関する分析】を読んでみてください。「シン・ゴジラ」、「君の名は。」のメガヒット以外に、演劇事業も好調だったことが窺えます。

次に事業別の詳細を確認します。資料にある通り、東宝では映画事業以外にも、演劇事業、不動産事業を行っていることがわかります。

演劇事業はともかく、不動産事業を行っていることを知らない人も多いのではないでしょうか。

資料によれば映画事業は増収増益、つまり収入も増えて利益も増えました。一方、演劇事業は増収減益、不動産事業は減収増益だったことがわかり、東宝の主軸事業である映画事業の好調さが窺えます。

とは言え、これはあくまで過去の数字で、今後どうなるかはわかりません。将来の事業予測については、4ページ以降【次連結会計年度の見通し】を読むことで推測できます。

ずらりと話題作が並ぶものの、全ての事業部門において、平成30年2月期の営業収入は減収となる見込みを立てています。これはちょっと不安な要素ですね。

そこで最新の決算短信はどうなっているか見てみましょう。平成30年2月期第1四半期決算短信の決算短信を開いてください。

前年の予測に対する結果

先ほどと同じように営業収入、営業利益、経常利益を見ます。すると減収見込みを立てていたにもかかわらず、いずれも前年の同じ時期に比較して、増加していることがわかりますよね。

そこで添付資料4ページ目【連結業績予想などの将来予測情報に関する説明】を読んでみます。要するに、当初は減収となる見込みだったが、予想以上に映画事業の業績が好調で、予想を上回ってしまったと説明されています。

このように企業は、前年度に見込んだ決算予想が変わるときは、投資家に対して報告しなくてはなりません。つまり決算短信は直近の本決算、四半期決算を読み比べてみると、企業の経営状況をより正確に判断することができておすすめです。

まとめ

これまで就活のために企業ホームページを訪れても、株主ではないからIR
情報なんて関係ない、と思って、敬遠してきた就活生も多いのではないで
しょうか。

しかし解説した通り、IR情報は企業が投資家にさらなる投資活動を促す目的で、非常にわかりやすく、また正確な情報を元に作られています。
是非とも企業研究の資料として活用するようにしてください。

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