私は以前、IT企業で人事を担当していたことがあります。
面接ではいつも「あなたは将来、弊社でどんな仕事をしてみたいですか?」と質問していました。
この質問の意図は、
- 第一に就活生がどのくらい企業の仕事を理解しているか
- 第二に就活生が考えている将来像と企業の間にミスマッチがないか
を確認するためです。
業界研究をおろそかにしてしまうと、自分の目指した理想と実際の仕事との間でミスマッチが生じてしまい、就職してから後悔することにもなりかねません。
そこで今回は、就活に必須の業界研究について、その目的と正しいやり方を解説していきます。
業界研究は志望企業探しの入り口と考える
就活を始めたばかりの段階で、将来どんな仕事をするかはっきりと決めている方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか?
おそらくほとんどの方は、自分が何をしたいのかわからない、どんな仕事に向いているのかわからない、といった状態のはずです。
そんな状態で業界研究と言われても、地図も持たずに山道を歩くのにも等しく、すぐに迷い道に入り込んでしまうことは間違いありません。
業界を網羅した書籍を読む
そこでまずは一冊、全ての業界を網羅した書籍に目を通してみましょう。東洋経済新報社発行の『「会社四季報」業界地図』や日本経済新聞社発行の『日経業界地図』などがお勧めです。
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ネットで業界のことを検索する
一通り読んだあと、興味を引いた業界をさらに調べていきます。この時点で業界別に解説された書籍を購入するのもよいですが、深く調べた結果、この業界は自分向きじゃないと気がつくこともあります。
そこで書籍を買う前に、ネットでその業界のことを検索してみてください。
自分で理解することが重要なので、必ずしもノートを取る必要はありません。
しかし、ネットの情報はいろいろなサイトに断片的に散らばっていることが多く、あとからどうだったっけ?と探す手間もかかります。それを防ぐためにも、重要なキーワードとそれが載っていたサイトのURLくらいは、メモしておくといいでしょう。
簡単に言えばエクセルのようなものでネット上で確認、編集できます。
簡単な作成例を作ってみましたが、メモとして使えるのでぜひ、利用してみてください。
「自分が進む業界はこれだ!」と確信が持てたら、ネットの情報をおさらいする意味でも個別の業界本に目を通してください。
秀和システムから発行されている『図解入門業界研究』シリーズが、評判も高くお勧めです。
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業界研究はミスマッチングを防ぐ一番の近道
それでは既に志望業界が決まっている場合、業界研究は必要ないのでしょうか?
答えはノーです。
実は志望業界が決まっていても、自分の認識を再確認する意味で、業界研究は必要です。
例えば以前、私が勤めていたIT企業の面接でこんなことがありました。
「将来、どんな技術者になりたいですか?」との質問に対して、「ロボットを作りたいです」と答えた学生がいたのです。
聞けば小さな頃から機械工作が得意で、ロボットにはずっと興味があったとのこと。語り口も熱く、真剣な思いが伝わる回答に、私を含めた面接官たちは関心しきりでした。
しかし一つだけ問題がありました。
残念なことに、勤めていた企業では、ロボットを製作したことはなく、将来的にも手がける予定がなかったことです。
これはもちろん、学生が企業についてのリサーチを怠ったことが原因ですが、それ以前にIT業界への理解が浅かったために起こってしまった問題なのです。
最近はAIが注目され、アメリカの大手IT企業が続々とロボット産業に参入している現状もあり、ロボットと言えばIT業界だろう、とこの学生は思い込んでしまったのでしょう。
しかし日本の状況としては、AIを含め、ロボット開発を牽引しているのは、精密機械メーカーや電気機器メーカーです。
業界研究さえやっておけば、自分が進みたいのはIT業界ではなく、こうした業界だとわかったはずです。
ですから既にやりたいことが決まっている学生でも、業界研究は怠らないようにしてください。
親会社?子会社?孫会社?業界研究はわからないことだらけ
- 親会社と子会社
- グループ企業に持ち株会社
これらの用語は耳にしたことがあっても、具体的に意味を説明できますか?
業界研究を進めていくと、A社はB社の100%子会社だ、とか、C社はCグループの持ち株会社だ、などの内容を目にするはずです。
例
- ミスタードーナツは、ダスキンの子会社
- すき家、なか卯、COCO’Sはグループ企業
簡単に説明すると、親会社とは子会社の経営判断に、影響を与えることができる企業のことです。
子会社・親会社の関係性について考えよう
その影響の割合は保有している株式数によって違いますが、極端な話『子会社の業績が振るわない、親会社の事業にとってメリットがない』などと判断された場合、親会社の意向で廃業させられることもあるのです。
廃業まで至らなくとも、別な企業に売却されて、それまでの企業文化が180度変わってしまった、なんて話もあります。
また一般的に、子会社は給与、福利厚生など待遇面において、親会社より劣る傾向にあります。
一方でメリットとして、親となる企業は大手であることが多く、その子会社ということで社会的信用が増すこともあります。
業界研究を行う際には、各企業がどのような関係性にあるのかも頭に入れながら、志望企業を決める参考にしていきましょう。
まとめ
業界研究の大切さがおわかりいただけたでしょうか。とは言え、業界研究はあくまで、志望企業探しの入り口に過ぎません。
なぜなら中途採用と違って、新卒採用では配属される部署が決まっていないことがあるからです。
例えば出版社に入って本や雑誌を作りたいと希望しても、編集部に配属されなければその夢は叶いません。希望する部署に配属されなくても、その業界で働きたいのかどうか、そこをしっかり見極めることが大切です。
いずれにしろ業界研究を始めてから、志望企業を決めるまでは時間がかかります。思い立ったらすぐ行動に移して、悔いのない就活にしてください。